クルマ中心社会から人間中心社会へ
MaaSとは、マイカーなどの移動手段を「所有」から「使用」へシフトさせていく、新しいライフスタイルを創出する概念
UberEATSはできても、なぜ日本でUberは浸透しなかったのか?
MaaSの実現は、衰退した地方公共交通の活性化にもつながる
→まさに交通の地産地消
足づくりはまちづくり
1、次世代交通システムについて
(導入)
今日は未来の話、テクノロジーの話がしたい。
昔と比べ、生活も随分便利になったし、テクノロジーの進歩はもうこれ以上必要ないという方も結構多くいらっしゃると思います。
しかし、グローバルな競争環境に置かれ、少子高齢化を他のどの国よりも早く迎える我が国には、課題が山積しており、テクノロジーの進歩による社会問題の解決と経済成長の両方が期待されます。
どのくらい未来の話なのか?
2025年から2050年までの今後約25年間くらいに起きる社会の変化の話だと思って聞いてください。
今日はテクノロジーの話をどれだけわかりやすく話せるのか?
この1点に全力を注いで、早速本題に入って行きたいと思います。
(目次)
①MaaSについて
②自走式ロープウェイ「Zippar」について
①MaaSについて
(現状の把握、課題の共有)
資料①移動の交通手段別構成比
日本の地方はクルマ社会。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏を除き、地方ではマイカー依存が進んでいる。クルマ社会になったことで、大きな駐車場のある大型店がはやり、中心市街地の商店街は衰退。他に使い道もないからと、街中には青空駐車場が目立っている。
それだけではない。
マイカー依存が進んだことで、公共交通機関も衰退した。日本バス協会の調べによると、乗り合いバスの利用者は、この半世紀で6割近く減少。朝晩の通勤・通学時間帯以外は、一時間に一本の路線があるなど、「利用者が減るから使い勝手が悪くなり、使い勝手が悪いからさらに利用者が減っていく」という悪循環に陥っている。
クルマがないと生活できない日本の地方生活。
秦野もそう、これをなんとかできないのか?
先日、とある市民の方とお話しをする機会があった。後期高齢者の旦那さんが要介護1の認知症と診断され、免許を返納。免許を持っていない奥さんは、徒歩とバスを乗り継ぐ買い物生活を突如強いられ大変困っているという。
リアルな問題だと思った、、、
秦野市では「とちくぼ買い物クラブ」「菩提買物支援隊」「栃窪移動支援事業」など、自治会や社会福祉法人の協力を得て、ボランティアのドライバーによる買い物支援、移動支援を行ってはいるが、運行回数(週に1回)や地域もごく限られていることから、団塊の世代が後期高齢者になる2025年以降、これらはあくまで対処療法にしか思えない。
免許を返納したクルマのない後期高齢者は、地方でどのように生活していけば良いのか?
質問①
今後、後期高齢者の免許返納者は増えて行くと予想されるのか?
回答①
本市におきましては、「秦野市人口ビジョン」において、75歳以上の人口は、令和2年と比較し、令和22年(2040年)は8,000 人増加し、市内全人口に対する後期高齢者の割合が約2割の超高齢社会が到来すると見込んでいます。 また、内閣府が発出した令和2年交通安全白書によると75歳以上の運転者の死亡事故における人的要因の約3割がハンドル操作の誤りなど、 操作不適によるものが指摘されており、平成31年4月に東京都の池袋で発生した高齢運転者による母子死亡事故など、社会的に高齢者の運転に注目が集まったことも要因の1つとなり、高齢者の免許返納は増加しています。 本年5月の道路交通法施行規則の改正では、75歳以上の運転免許を受けた者で一定の要件に該当するものは、運転免許証の更新時に、運転技能検査を受けなければならず、都道府県公安委員会は、運転技能検査の結果によっては運転免許証の更新ができなくなる等更新時検査の厳格化の影響も考えられ、運転免許証を返納する方は増加していくものと考えています。
(MaaSとは?)
マース:Mobility as a Serviceの略
モビリティ(移動)サービスの全く新しい概念
インターネット、スマートフォン、AI、自動運転などの新しいテクノロジーによって、今「100年に一度のモビリティ革命」が世界中で起ころうとしている。
MaaSとは、マイカーよりも魅力的な移動サービスを提供し、車、自転車などの移動手段を「所有」から「使用」へシフトさせていく、新しいライフスタイルを創出する概念。
もちろん、マイカーを手放すには、多様な交通手段があるのが前提。
<既存の交通サービス>
電車、バス、タクシー、自転車
だけでは足りず
<新しい交通サービス>
カーシェアリング、自転車シェアリング、電動キックボードシェアリング
デマンド型乗合タクシー、Zippar
これらをすべて統合し、1つのスマートフォンのアプリを通じてルート検索、予約、決済の全てができ、後はスマートフォンをかざすだけという世界がすぐそこまで迫っている。
MaaS先進国であるフィンランドでは、MaasSにより公共交通利用者が増えたとのこと。
質問②-1
市長の施政方針演説「小田急4駅周辺のにぎわい創造プロジェクト」「歩いて暮らせるまちづくり」の背景には、こうしたMaaS導入のお考えはあるのか?
回答②-1
既に小田急電鉄では、マースアプリとなる「エモット」を運用開始しています。エモットは、電車やバス、タクシーなどを移動手段に選べる「乗り換え検索機能」のほか、観光地を周れるチケットや、飲食チケットなど、移動・生活サービスの電子チケットをスマートフォンのアプリで購入できるサービスです。また、神奈川中央交通でも、エモットのみの限定ですが、平日朝を除いた定額乗り放題チケットを、1月17日から、枚数及び期間限定で販売しています。このエモットによるサービスは、令和元年(2019年)10月から実証実験が始まり、順次サービス内容は拡充されており、今後も充実していくことと思います。市内の電車、バスなどの公共交通がシームレスに繋がれば、利便性の向上になるとともに、観光地や飲食店と連携することにより、市の賑わいにも繋がっていくものと考えます。マースの導入については、市単独で運営することは想定していませんが、小田急電鉄等が観光型マース等のサービスを拡充する際には、市内でのサービス提供に協力し、しっかり連携していきたいと考えております。
質問②-2
MaaS導入の際には、市内でのサービス提供に協力したいとのことですが、「市内でのサービス提供」とは?具体的にどのようかお答えください。
回答②-2
小田急と神中が手を組んでマースアプリを運用開始しているとのこと。
今、世界では、MaaSプラットフォーマーになるための、「覇権争い」が繰り広げられている。
2018年:ソフトバンクとトヨタ自動車は、共同出資して、新会社モネ・テクノロジーズを設立、MaaS事業において、提携を結んだ。
秦野において、新しいモビリティ経済圏を制するのは
小田急のような鉄道会社と神奈川中央交通のようなバス会社の連携
(日産自動車のような)自動車メーカー
新しく電動キックボードシェアリングを始める個人ベンチャーやIT事業者
NTTドコモのような通信会社かもしれない
NTTドコモは、自転車シェア事業の「ドコモ・バイクシェア」を立ち上げ、モビリティサービスへの参入を図っている。
国内企業が覇権を握るのなら、まだいい。
G→google
A→amazonn
F→facebook
A→apple
世界のテクノロジーの早すぎる変化についていけなかった10年。
日本はこの10年で海外発の巨大プラットフォーマーに一気に覇権を握られた。
(例)
本をアマゾンで買う。
今まで書店に落ちていた販売手数料25%がアマゾンに持っていかれる。
1100円の25%って275円。
日本全体で考えれば、ものすごい損出。
中国では、こうした米国のプラットフォーマーたちの活動を情報鎖国することによって、中国のGAFAと呼べるBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)のような巨大なプラットフォーマーたちが育った。
欧州では、2018年から、EU一般データ保護規則を施行。EU外への個人データの持ち出しを禁止するなど「米国企業の好きにさせない」という気迫を感じさせる。
しかし、日本は全くのノーガード。出版業界、音楽業界、エンタメ業界、旅行業界などさまざまなコンテンツ業界がプラットホームビジネスの波に飲み込まれている。
こういったことが今後、交通業界にも起こってくる。
質問②-3
国内でのマースの実現には規制の緩和も必要になってくるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか?
回答②-3
規制緩和
UberEATSはできても、なぜ日本でUberは浸透しなかったのか?
Uberとは、2009年にアメリカで誕生した配車サービス。タクシー会社に勤めていなくても、サービスに登録すれば、誰でもドライバーとして働くことができる、日本ではいわゆる「白タク」のこと。
ユーザーは、専用のスマホアプリを使って簡単に車を呼べるほか、リーズナブルな料金で利用できるため、各国で人気を集めている。
僕が日本に帰国する2016年には治安の悪いブラジルでも流行り出していた。目的地を事前にアプリに入力すると、金額、ドライバーの車種やナンバー、顔や氏名までわかり、支払いも事前に登録したクレジットカードで決済されるため、運賃も騙されることなく、降車もスムーズにできる。
しかし、日本では一般のドライバーが運転手として働く「白タク」は法律違反。
こうした規制の緩和をボトムアップで国土交通省に働きかけていく。
また、日本の狭い道路で、安全に乗り降りのできる降車場をどうやって作り出すのかなど、道路交通法上の整備も必要になってくるのかもしれない。
(MaaSを具体的にイメージさせる)
秦野市役所→上小学校へ移動
Google→既存の交通サービスを示してくれる
車(18分)
電車(51分)→時間がかかりすぎ
徒歩(1時間17分)→時間がかかりすぎ、健康志向の人ならOK
タクシー(18分)→お金がかかる
自転車(30分)→所有していない
これじゃ、正直マイカーを手放そうとは思えない。
これに対して、新しい交通サービス。
デマンド型乗合タクシーのような新しい交通サービスが充実していたらどうか?
先ほど話したUber、一度も会ったことのない、一般のドライバーの車に1対1で乗車する文化というのは、個人対個人の関係が希薄な今の日本文化には馴染まず、それよりはむしろ、複数人によるデマンド型乗合タクシーの方が、定着しやすいのではないか?と個人的には思っているのですが、
質問③
本市にも、デマンド型タクシーが栃窪・渋沢エリアで運行しているが、利用者の状況と課題について、教えてください。
回答③
現在、デマンド型タクシーは、市内のタクシー事業者により運行されており、渋沢駅エリアと栃窪・渋沢エリアの間を結ぶ地域の足として、住民の方に利用いただいています。あらかじめ利用者登録を行い、利用する際は、電話予約が必要です。新型感染症による影響を受ける前の運行便数は、平成26年度以降増加傾向にありましたが、コロナ禍では、運行便数が大幅に減少しました。1便あたりの利用者数は、平均で約1人となっています。デマンド型タクシーも、乗合タクシーであることから、1台あたりの利用者が増えることにより、運行事業者の収益に繋がるため、乗車人数の向上が期待されるところですが、乗り合わせる機会が少ないことが要因の一つであり、課題であると考えています。そのため、一人乗車の場合の運賃は350円ですが、2名以上で同時に利用する場合は300円としたり、往復で利用する場合は、復路の運賃を250円としたりするなど、運賃割引きサービスも導入しています。利用者を増やすため、引き続き「広報はだの」や自治会回覧等を活用し利用方法を周知するなど、利用促進に努めてまいります。
資料②デマンド型乗合タクシーの利用状況
今後はこれをさらに進化させたデマンド型の乗合タクシーが必要になってくる。具体的には、AIやアプリを利用したより効率的な配車。
車体は、9人乗りのバン。
価格は路線バスより高く、タクシーより安い。
運行形態の面でも、バスとタクシーの中間的な存在という位置付けのサービス。
実際にこういったモビリティサービスがあれば、同じ家族内で二台目の車の購入を考え直すかもしれない。
もちろん、これ単体では、全ての需要に応えるには相当の台数が必要で、コスト的にも成り立たない→他の交通との組み合わせが重要。
しかし、ドアtoドアのシームレスな移動を考える際に、小田急4駅からの2次交通として、このバスとタクシーの中間的な存在であるデマンド型の進化バージョンの乗合タクシーは重要なカギを握るプレイヤーになる。
(MaaS導入のメリット)
質問④
MaaS導入のメリットをどのようにお考えか?
回答④
マースのメリットは、電車やバスなどの運行状況をリアルタイムで取得し、渋滞情報などの交通データを反映した経路検索や、移動に要する費用についてスマートフォンでの決済を可能とすることにより、利用する交通機関ごとに窓口や発売機で乗車券等を購入する手間の解消など、移動の効率化を図ることです。公共交通機関を利用しやすくすることにより、維持コストがかかる自家用車を使用するメリットが少なくなり、移動が自家用車から公共交通にシフトすれば、自家用車の利用客が減少し、経営が厳しい状況にある公共交通事業者の収益確保に繋がるほか、渋滞の緩和や、排気ガスの排出削減も期待ができます。また、観光施設や商業施設とも連携させ、チケットの予約や決済もスマートフォン一つで出来るようになり、賑わいにも繋がる可能性はあると思います。
MaaS導入には、本当にたくさんの効果が期待できる、二つお答えして頂いた。
①「移動が自家用車から公共交通にシフトすることで、公共交通事業者の収益確保に繋がる」
資料③JA共済「みらいのねだん」
これまでクルマにかかっていたコスト。
車両購入費を除く、年間の維持費だけでも、月額あたりコンパクトカーで約3万円
200万円のクルマを買って、10年間使用すると車両購入費は月額2万円
つまり月額5万円程度の費用をクルマに支払っている計算になる。
クルマ社会の地方でもクルマに乗っているのは一日せいぜい1時間程度で、稼働率にすれば4%程度。それに対して月額5万円を払っているのは不経済。だったら、月30日として一日換算をすれば、1,700円程度。この1,700円で移動できるのはタクシーなら4~5km。
これまでマイカーの購入やガソリン購入に充てられていた費用は、交通サービスを提供する交通事業者に回るようになり、地域内での資金が循環するようになる。
まさに交通の地産地消
→MaaSの実現は、衰退した地方公共交通の活性化にもつながる
②「観光施設や商業施設と連携させることで、賑わいに繋がる」
MaaSはあくまで手段、その先に本当の価値、ビジネスチャンスが存在し、にぎわいに繋がる。
足づくりはまちづくり
クルマがないと生活できないから、かつてはかなりの高価格で分譲されていた場所でも、今は交通の不便な場所として、地価が大幅に下落しているところは多い。
敷地面積60坪以上の中古一戸建てが相当な低価格で手に入る。
MaaSが普及し、マイカーがなくとも困らない暮らしが実現すれば、こういう場所でも何ら不便を感じることなく住めるようになる。そうなれば、自然豊かな環境でのびのびと子育てをしたい若い世代が、リーズナブルな出費で理想の子育てができる場所として、移住してくるかもしれない。
MaaSの実現は、免許を持てない人にとって福音となるだけでなく、子育て世代や年収の低い世帯に、良質で安価な住宅を手に入れる機会も提供できる。
また、クルマ中心社会になっている日本の地方都市は、歩いていける範囲に出ていきたくなるような場所がない。中心市街地は寂れ、休日の過ごし方といえば、特定の趣味のある人を除き、郊外のショッピングセンターに行くのが関の山。そもそもファミリー層以外にはそんなに楽しい場所でもない。
独り身の若者や子供が独立した後の成熟した世代が楽しめるような場所が、日本の地方都市には圧倒的に欠けている。
これに対して、ヨーロッパの地方都市は、そんなに大きくなくても中心市街地に常に人の往来があり、「にぎわい」がある。中心部には路面電車が走り、車がなくとも移動ができて、ウィンドーショッピングをしたり、公園やカフェでのんびりしたりできる。休日は広場にマルシェが開かれ、朝から大勢の人でごった返す。
衰退していない欧州の地方都市に共通するのは、歩いて楽しい町、クルマがなくとも移動に困らない町になっているということ。
ヨーロッパではクルマ社会からの脱却を目指したまちづくりが行われるようになったのは1970年代以後、まだ30年にも満たない。
日本には、欧州が経験してきたこういう努力が徹底的に欠けている。政府の「未来投資戦略2018」がMaaSとまちづくりとの連携を強調するのは、MaaSをきっかけに、足づくりとまちづくりの間に橋を架けようとしているから。
質問⑤ 政策部長へ
「小田急4駅周辺のにぎわい創造プロジェクト」「歩いて暮らせるまちづくり」にMaaS導入を前提とした、「歩いて楽しい町」「クルマがなくとも移動に困らない町」の考えを取り入れるべきだと思うのですが、どうですか?
回答⑤
クルマ中心社会から人間中心社会へ
移動の「所有」から「使用」へパラダイムシフトした世界観を持って、今後のまちづくりを考えていかなければならない
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